×× トマト
父さん。父さん。父さん父さん。
何度も頭の中で繰り返した。
でも重ならない。
その赤茶の目。
俺と似てて違う。
旅の仲間だったのが俺の父さん。
いつも頭がぐるぐるするんだ。
父さん父さん父さん。
ただの仲間だと思ってたから、その響きと重ならないんだ…よなぁ?
それとも、…、?
クラトスって呼びたくてはがゆくなるのは、…なんでだ?
××××××
それから俺はギクシャクしてる。
クラトスの目が見れない。
視界の端でクラトスが俺に穴が開くくらいジッと見てるのに、俺の視線が移動すると、見るのをやめる。
それでふと思う。
いつも俺を見てたなって。
〈いつから気付いてたんだよ?〉〈息子だから目が放せなくなった?〉
聞きたいけど、聞いたってつまらないんだろうな、と思ってやめる。
それに目も合わせられないのに話せるわけがない。
どうにもだめみたいなんだ。
飲み込めない。飲み下せない。
「クラトスが…俺の父さん?」
嘘だ、と言ってしまった俺の口のずっと奥を見た、クラトスのあの目を思い出すたびに、
許しをやりたくなる。
傷付いてないから、俺は父さんがクラトスで嫌なんかじゃないんだ ……そんな嘘でも言ってやりたい。
こんな最低な考えがぐるぐるしてる。
このままじゃだめだよな。
…言おう。
目が見れない事も。そんな父親みたいな目が嫌いなことも。
父さんって、まだ呼べないんだって。
×××××
「…」
クラトスは扉を背にして突っ立ったまま黙ってる。
俺から話があるって呼んだから、そりゃ話す事はないんだろうけど。
少しだけ、話しやすいようにしてくれればいいのに、ってわがままを思い付いた。
それと同時に、クラトスにわがままで子供だって思われたくないな、と思った。
「突っ立ってないで、ベッドにでも腰掛ければいいだろ。遠慮しないで……って宿屋なのに遠慮もなにもないよな!」
語尾を少し明るくした。
自分の耳にも痛々しい空元気だったのに、クラトスは少しだけ微笑んでくれた。
珍しい笑顔に、一瞬してから俺はかえって不安になった。
クラトスはゆっくりベッドに腰を下ろした。
スプリングの呻きが、俺の心臓に響く。
「俺…クラトスのこと、父さんって、呼べない…」
クラトスの口元が、少し力んだ。またあの空ろな目をしてるんだろうか。…見れない。
「………そうか」
「えっ…と……いきなりだったし…それに父さんって感じじゃないっていうか、何か色々あるけど、とにかく、
父さんって呼んだりできない…」
「…別に呼ばなくても良い」
あれ…俺、今すごく傷付けてないか。
「でもあんたは俺の事息子として見てる」
「………」
すまない、って言うんだろ。
「そういう目をやめてほしいんだ。俺、」
(息子として見られたくない)
飲み込んだ。
こんなことを言ってしまったら。
クラトスはどんな顔をするんだ。
「ごめん 俺」
「ロイド」
クラトスの堅い声が、俺のぐにゃぐにゃになった頭を起こした。
スプリングがぎしりと言う。呻くな。クラトスの音を立てるな。
「私は…お前のことを息子として見てしまう。それはやめることができない。
…どうしても、お前が生きていることに私は幸せを感じる。お前の成長に嬉しくなる。お前のことを見ているのが…」
「もうやめてくれ!」
「……ロイド。すまないがやはり愛しているのだ。アンナとの子として、愛さずにはいられぬ」
見てしまった。
顔を上げて。
その唇を。
紡いだ言葉を見たくて。
「ちがう」
あんたは俺をあいしてないよ
こんなふうに苦しくあいしてないだろ?
その途端。
赤い風船が
切なそうに ぱちり、と割れた音がした
そのときやっと、膨らんでいたことを知った
むきだしの心が脈打って、
ぽろぽろと溢れた
「…何故…泣く」
「……クラトス…俺…」
ぎしり。
クラトスがこっちに来る。
あったかい手が頭を撫でる。
ちがうぜ、俺はそうしてほしいんじゃないんだ
「俺は…あんたのことが」
抱いちゃいけない感情だとか、隠せとかいう理性
そんなものはふっとんでた
だって止まらないんだ
もう風船は割れてしまった。
真っ赤な不味いトマトが
口の中ではじけて吐き出したいみたいに。
the end
×××××××××
…ここまで読んでくださってありがとうございました。
相変わらず訳の分からぬ文ですみません!
…ああーロイクラ好きなんですけど形にしようとすると!なんという根暗ロイド!
私が根暗だから仕方ないなということでひとつ\(^O^)/
オリジナルで書いていた「赤い風船」という話を、「トマト」と改めロイ→クラに仕立てあげてみました
やっぱ…難しい…お話書くの…
このあと二人がどうなるのかはご想像にお任せします!
まさに「ジ・エンド」のつもりでかいてましたが、ラブラブなロイクラも大好きなんで…
そのうちくっつくハッピーも希望!
でもとりあえずこの直後父さん固まると思います。
そんな父さんも可愛いなはっはっは
激しく自己満足な妄想にお付き合い頂きありがとうございました。